親の介護が始まりそう・始まった不安 働く私が知っておきたいこと
親の介護に不安を感じているあなたへ
親御さんの年齢を重ねるにつれて、「いずれ介護が必要になるかもしれない」「もし介護が始まったら、私はどうすれば良いのだろうか」といった不安を感じる方は少なくありません。特に、お仕事を続けている方にとっては、介護と仕事の両立に対する心配は大きなものとなるかもしれません。漠然とした不安、具体的な疑問、そして周囲に相談しにくいと感じることもあるかもしれません。
介護は多くの方がいつか直面する可能性のある課題です。そして、その準備や対応に「正解」があるわけではありません。一人で全てを抱え込まず、少しずつ情報を集めたり、考えを整理したりすることが大切です。このページでは、親御さんの介護が始まりそう、あるいは始まったと感じたときに、働くあなたが知っておきたいことや、不安との向き合い方について考えていきます。
介護に対する「不安」の正体を知る
私たちが介護に対して不安を感じるとき、その背景にはいくつかの理由が考えられます。
- 体力的な不安: 介護にかかる労力に対する心配
- 時間的な不安: 介護と仕事、家事、自分の時間とのバランスが取れるかという心配
- 経済的な不安: 介護にかかる費用や、働き方を変えることによる収入減への心配
- 知識や情報不足の不安: 介護サービスの種類や利用方法、手続きなどが分からないことへの心配
- 精神的な不安: 精神的な負担、ストレス、自分の感情との向き合い方への心配
- 誰に相談すれば良いか分からない不安: 周囲に頼る人がいない、あるいは頼りづらいと感じることへの心配
これらの不安は、多くの人が共通して抱えるものです。大切なのは、これらの不安を漠然としたままにせず、「何について具体的に不安を感じているのか」を少しずつ整理してみることです。
働く私たちが考える「介護と仕事の両立」
お仕事を続けている方にとって、介護と仕事の両立は大きな課題です。現実的な対応を考える上で、まず知っておきたいことがあります。
1. 会社の制度を確認する
多くの企業には、従業員が家族の介護を行う際に利用できる制度があります。
- 介護休業: 要介護状態にある家族を介護するために、一定期間仕事を休むことができる制度です。原則として対象家族1人につき通算93日まで取得可能です。
- 介護休暇: 要介護状態の家族の介護や世話をするために、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、1日単位または時間単位で取得できる制度です。
- その他の支援: 企業によっては、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、在宅勤務制度など、介護と仕事を両立しやすくするための独自の制度を設けている場合があります。
これらの制度は、働く皆さんの権利として法律で定められているものもありますが、具体的な内容や手続きは会社の就業規則によって異なります。まずは、会社の就業規則を確認するか、人事部門や総務部門に相談してみることが推奨されます。
2. 早めに上司や同僚に相談する
介護の必要性が生じた、あるいは生じそうな段階で、できる範囲で構いませんので、信頼できる上司や同僚に状況を共有することを検討してみてください。
相談することで、会社側も状況を把握し、どのような支援が可能か、業務の調整はできるかなどを一緒に考えてもらいやすくなります。一人で抱え込まず、周囲の理解を得ることは、長期的な両立のために非常に重要です。ただし、どこまで話すかはご自身の判断によりますし、話しやすいタイミングや相手を見つけることも大切です。
一人で抱え込まないための「相談先」を知る
介護に関する不安や疑問は、一人で解決しようとするとより重く感じてしまうことがあります。利用できる相談先を知っておくと、いざというときに心強い支えとなります。
1. 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活を地域で支えるための拠点です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、介護に関する相談、介護予防の支援、権利擁護、様々な機関との連絡調整などを行います。親御さんがお住まいの市区町村に設置されています。どこに相談すれば良いか分からない場合、まずはこちらに連絡してみるのが良いでしょう。
2. ケアマネジャー(介護支援専門員)
要介護認定を受けた方が、ケアプラン(介護サービスの計画書)を作成するのを支援する専門家です。サービスの選定や事業所との連絡調整なども行います。親御さんが要介護(または要支援)認定を受けたら、ケアマネジャーに相談し、一緒にケアプランを作成することになります。
3. 市区町村の介護保険担当窓口
お住まいまたは親御さんがお住まいの市区町村の窓口では、介護保険制度に関する説明や、要介護認定の申請手続きについて相談できます。
4. 職場の相談窓口
会社に人事部門や産業保健スタッフ(産業医、保健師、カウンセラーなど)がいる場合、仕事との両立や精神的な負担について相談できることがあります。
5. その他
友人や家族、同じような経験をしたことのある知人、介護に関する書籍や信頼できるウェブサイトなどからも情報を得ることは可能です。ただし、情報の正確性には注意が必要です。
不安との向き合い方、心構え
介護は長期にわたることが多く、予測できないことも起こります。完璧を目指しすぎず、ご自身の心身の健康も大切にすることが、長く続けるための鍵となります。
- 情報を整理する: 一度に全てを知ろうとせず、必要な情報を少しずつ集めて整理する。信頼できる情報源を選ぶ。
- 利用できるサービスを知る: 介護保険サービスだけでなく、地域のボランティアや民間のサービスなど、利用できるものは積極的に検討する。
- 休息をとる勇気を持つ: 介護は心身に負担がかかります。自分の時間を作り、趣味や休息にあてることも大切な介護の一つです。
- 感情を受け止める: 不安、つらい、疲れたといった感情は自然なものです。その気持ちを否定せず、誰かに話を聞いてもらうなどして受け流すことも大切です。
最後に
親御さんの介護は、多くの人にとって初めての経験であり、不安を感じるのは当然のことです。働く中でこの課題に直面することは、さらに心細さを感じさせるかもしれません。しかし、あなたは一人ではありません。様々な制度や相談先があり、周囲の理解や協力を得ることも可能です。
全てを一度に解決しようと思わず、まずは小さなステップから始めてみてください。例えば、親御さんがお住まいの地域の地域包括支援センターの連絡先を調べてみる、会社の介護に関する制度を確認してみる、信頼できる人に少し話をしてみるなどです。
この情報が、あなたが介護への不安と向き合い、前向きにステップを踏み出すための一助となれば幸いです。
【免責事項】 この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する専門的なアドバイスではありません。介護に関する具体的な手続きやサービスの利用、法的な内容については、必ず専門機関や公的な窓口にご相談ください。また、健康や医療に関する内容は、医師の診断や指示に代わるものではありません。