更年期世代の関節痛・肩こり 上手なつきあい方と和らげるヒント
更年期世代に感じやすい関節痛・肩こりの悩み
年齢を重ねるにつれて、以前は感じなかった体の変化に戸惑うことがあるかもしれません。特に50代前後になると、「肩や腰が重い」「朝起きると指の関節がこわばる」「膝が痛むことがある」といった、関節や筋肉のこわばりや痛みに悩まされる方が増えてくるようです。これらの症状は、更年期に差し掛かる時期と重なることも多く、つらい体調不良の一つとして感じられることがあります。
一人で「年だから仕方ない」と諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの症状には、いくつかの原因が考えられ、適切に向き合うことで和らげたり、改善したりする可能性があります。ここでは、更年期世代に起こりやすい関節痛や肩こりの背景にあることと、日常生活でできる工夫や対策についてご紹介します。
なぜ更年期に体の痛みを感じやすくなるのか
更年期は、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく減少する時期です。エストロゲンは、女性の体にとって様々な働きをしており、その一つに骨や関節、筋肉の健康を保つという役割があります。エストロゲンが減少すると、以下のような体の変化が起こりやすくなり、関節痛や肩こりにつながることが考えられています。
- 骨密度の低下: エストロゲンは骨の健康を保つために重要です。減少により骨がもろくなりやすく、関節への負担が増える可能性があります。
- 軟骨や腱、筋肉への影響: エストロゲンは関節の動きを滑らかにする軟骨や、筋肉と骨をつなぐ腱、筋肉自体にも影響を与えています。減少することで、これらの組織の柔軟性や強度が失われ、こわばりや痛みを引き起こしやすくなることがあります。
- 血行不良: ホルモンバランスの変化が自律神経の乱れにつながり、血行が悪くなることで、肩こりや腰痛が悪化するケースも見られます。
- 精神的な要因: 更年期には気分の落ち込みや不安感が生じやすいこともあります。こうした心の不調が、体の痛みを強く感じさせたり、緊張から筋肉のこわばりを招いたりすることもあります。
もちろん、加齢による体の変化や、過去のケガ、生活習慣(長時間の同じ姿勢、運動不足、冷えなど)も関節痛や肩こりの原因となります。更年期のホルモンバランスの変化は、これらの要因と組み合わさって、症状をより強く感じさせる可能性があると言えます。
日常生活でできる具体的なセルフケア
関節痛や肩こりを和らげるために、まずはご自身の日常生活でできることから試してみてはいかがでしょうか。無理のない範囲で継続することが大切です。
- 適度な運動とストレッチ: 急な激しい運動ではなく、ウォーキングや軽い体操、ストレッチなど、体への負担が少ないものから始めましょう。筋肉の柔軟性を保ち、血行を促進することが期待できます。特に肩や首、股関節周りをゆっくりと伸ばすストレッチは効果的です。湯船に浸かりながら行うのも良いでしょう。
- 体を温める: 関節や筋肉の痛みが冷えで悪化することはよくあります。入浴でしっかりと体を温めたり、ホットパックや温湿布を使ったりするのも良い方法です。ただし、炎症がある場合は冷やす方が良いこともありますので、症状に合わせて使い分けましょう。
- 姿勢を意識する: デスクワークや家事などで長時間同じ姿勢を続けると、特定の部位に負担がかかりやすくなります。意識して姿勢を正したり、定期的に休憩をとって体を動かしたりすることが大切です。座る時は深く腰掛け、背筋を伸ばすことを心がけましょう。
- バランスの取れた食事: 骨や関節の健康に必要なカルシウムやビタミンD、筋肉を作るたんぱく質などをバランス良く摂ることが推奨されます。また、体を温める食材や、血行を良くすると言われる栄養素を含む食事も良いでしょう。
- 十分な睡眠と休息: 体の修復は睡眠中に行われます。質の良い睡眠を十分にとることで、疲労回復が進み、痛みやこわばりが和らぐことが期待できます。また、日中に適度に休息をとることも大切です。
- ストレスを溜め込まない工夫: ストレスは体の緊張を高め、痛みを増幅させることがあります。趣味の時間を持つ、友人と話す、軽い運動をするなど、ご自身に合った方法でストレスを解消する時間を作りましょう。
専門家への相談を検討する目安
セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、一人で抱え込まずに専門家への相談を検討してみましょう。
- 痛みがひどく、日常生活(着替え、歩行、物の上げ下ろしなど)に支障が出ている
- 特定の関節が赤く腫れたり、熱を持ったりしている
- 痛みが安静にしていても続く、または夜間に強くなる
- 体の左右どちらかだけに強い痛みやしびれがある
- 急に体のどこかが動かしにくくなった
- 数週間セルフケアを続けても変化が見られない
これらの症状がある場合、関節リウマチや変形性関節症など、更年期とは別の原因が考えられる可能性もあります。まずはかかりつけ医に相談するか、整形外科を受診するのが一般的です。更年期症状の一つとして痛みが強く出ている場合は、婦人科で相談することも選択肢の一つとなります。医師に相談する際は、いつ頃からどのような痛みがあるのか、どんな時に痛むのかなどを具体的に伝えると良いでしょう。
痛みとうまくつきあっていくために
更年期世代の体の変化は誰にでも起こりうる自然なことです。関節の痛みや肩こりといった症状が出ても、「どうして自分だけ」と落ち込む必要はありません。同じような悩みを抱えている方は多くいらっしゃいます。
大切なのは、ご自身の体の声に耳を傾け、無理をせず、できることからケアを始めることです。ご紹介したセルフケアを試したり、必要であれば専門家の力を借りたりしながら、つらい症状と上手につきあっていく方法を見つけていきましょう。体の状態が少しでも楽になることで、心も軽やかになるはずです。諦めずに、ご自身の体と向き合ってみてください。