更年期世代の「なんとなく不調」 原因と向き合い方、セルフケアのヒント
50代からの「なんとなく不調」は、もしかして更年期の影響かもしれません
「なんだか調子が悪い」「体がだるいけれど、どこが具体的に悪いのか分からない」「病院で検査しても特に異常はないと言われた」――。このような漠然とした体調不良に悩む方が、50代前後から増える傾向にあります。
この「なんとなく不調」は、更年期に差し掛かる女性に起こりやすい症状の一つです。更年期は、卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が大きくゆらぎながら減少していく期間を指します。このホルモンバランスの変化が、体に様々な影響を及ぼすことが知られています。
漠然とした不調を感じていると、原因が分からず不安になったり、一人で抱え込んでしまったりすることがあります。しかし、これは多くの人が経験する可能性のある変化であり、適切な情報と向き合い方を知ることで、心身の負担を和らげることが期待できます。
なぜ「なんとなく不調」が起こるのでしょうか
更年期におけるエストロゲンの減少は、全身の様々な機能に関わる自律神経のバランスにも影響を与えることがあります。自律神経は、心拍、血圧、体温調節、消化、ホルモン分泌など、体の無意識の働きをコントロールしています。この自律神経が乱れると、特定の病気ではなくても、以下のような多様な症状が起こりやすくなります。
- 疲労感や倦怠感: 十分な休息をとっても疲れが抜けない、体が重いと感じる。
- 睡眠の質の低下: 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、眠りが浅い。
- 頭痛やめまい: 特定の原因がはっきりしない頭痛や、立ちくらみ、めまいを感じる。
- 肩こりや関節の違和感: 体のあちこちに凝りや痛みを感じやすくなる。
- 消化器系の不調: 便秘や下痢、お腹の張りなど。
- 気分の落ち込みやイライラ: 感情の波が大きくなる。
これらの症状は一つだけで現れることもあれば、いくつか組み合わさって現れることもあります。また、症状の程度も人によって大きく異なります。健康診断では異常が見つかりにくいため、「気のせいかな」と思ってしまいがちですが、これらの不調も更年期の影響である可能性が考えられます。
加えて、この世代は仕事や親の介護、子育ての終了など、ライフイベントによるストレスを抱えやすい時期でもあります。こうした外部からのストレスも、更年期の症状を強めたり、漠然とした不調の原因となったりすることがあります。
「なんとなく不調」との具体的な向き合い方とセルフケア
漠然とした不調に対しては、まずご自身の心と体の状態を丁寧に観察することが第一歩となります。
1. 体調の変化を記録する
いつ、どのような時に、どのような症状が現れるかを簡単にメモしてみましょう。症状の強さや、その日の活動内容、食事、睡眠時間、気分の状態なども合わせて記録することで、不調のパターンや、症状を悪化させる要因、和らげる要因が見えてくることがあります。専門家に相談する際にも、具体的な情報として役立ちます。
2. 基本的な生活習慣を見直す
体の土台を整えることは、不定愁訴を和らげるために非常に重要です。
- 食事: バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、女性ホルモンと似た働きをするといわれる大豆製品(豆腐、納豆など)を積極的に摂ることや、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB群、マグネシウムなどのミネラルを意識して摂ることが推奨されています。加工食品やカフェイン、アルコールの摂りすぎは控える方が良い場合があります。
- 睡眠: 質の良い睡眠を確保するために、寝る前にリラックスできる時間を作る、寝室の環境を整える(温度、湿度、光)、寝る直前のスマートフォンやパソコンの使用を控えるなどの工夫をしてみましょう。毎日同じ時間に寝起きすることも、体のリズムを整えるのに役立ちます。
- 運動: 無理のない範囲で体を動かす習慣を持ちましょう。ウォーキングや軽いジョギング、ヨガ、ストレッチなどは、血行を促進し、自律神経のバランスを整え、ストレス解消にも効果が期待できます。
3. ストレスマネジメントを取り入れる
ストレスは心身の不調を悪化させる大きな要因です。ご自身に合ったリラックス方法を見つけることが大切です。
- 深呼吸や瞑想
- 軽いストレッチやヨガ
- アロマセラピーやぬるめのお風呂
- 好きな音楽を聴く、読書をする
- 自然の中で過ごす時間を持つ
完璧を目指すのではなく、毎日少しずつでも、心身を休める時間を作ることを意識しましょう。
4. 誰かに話を聞いてもらう
一人で悩みを抱え込まず、信頼できる家族や友人、同僚に話を聞いてもらうことも有効です。話すことで気持ちが楽になったり、客観的な視点を得られたりすることがあります。同じような経験をしたことのある方と話すことも、共感や安心感に繋がるかもしれません。
専門家への相談も検討しましょう
セルフケアを試しても不調が改善しない場合や、症状によって日常生活に支障が出ている場合、不安が強い場合は、専門家への相談をためらわないことが大切です。
- 婦人科: 更年期に関連する症状について相談できます。ホルモン補充療法など、様々な治療法や緩和ケアについて情報を提供してくれます。
- かかりつけ医: 全身の健康状態を把握しているかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。他の病気の可能性がないか確認したり、適切な診療科を紹介してもらったりできます。
- 心療内科や精神科: 気分の落ち込みや強い不安感が続く場合は、心の専門家に相談することも有効です。
- 更年期に関する相談窓口: 自治体や医療機関によっては、更年期に関する相談窓口を設けている場合があります。
「なんとなく不調」は、ご自身の心と体が発している大切なサインかもしれません。ご自身の状態に耳を傾け、必要に応じて外部のサポートも活用しながら、この時期を穏やかに過ごすための方法を探していきましょう。
まとめ
更年期世代に現れやすい「なんとなく不調」は、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れ、ストレスなどが複合的に影響している可能性があります。原因が特定しにくい場合でも、ご自身の体調の変化を記録すること、生活習慣を見直すこと、ストレスをケアすること、そして一人で抱え込まず誰かに相談することは、症状を和らげ、心身の安定を取り戻すために役立ちます。必要であれば専門家の力を借りることも、前向きに検討してみてください。ご自身の心と体に優しく向き合うことが、この時期を乗り越えるための大切な一歩となります。